大人アトピーの原因・保湿法・注意点まとめ
2018/06/16
アトピーの症状が人によって様々であるのと同様、その原因や保湿の方法、治療法なども統一されたものがなかなかないので混乱してしまう方も多いと思います。
科学的・医学的に正しい対処をしたからといって治ることが保証されていないのがアトピーという病のもどかしいところでもあり、奥深さでもあるわけですが、ここでは現在までにわかっているアトピーの原因や、きちんとした根拠に基づいた保湿法、またケアに際する注意点などをまとめてみました。
アトピーの基礎的なメカニズムと保湿の根本的な意味など、「ガイドライン」的な内容を目指しましたので、ご参考になればと思います。
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アトピーの原因
日本皮膚科学会の定義によると、アトピー性皮膚炎とは
憎悪、寛解を繰り返す、掻痒のある病変を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。アトピー素因とは1.家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれか、あるいは複数の疾患)があること、または2. IgE抗体を産生しやすい素因をさす
出典:日本皮膚科学会
とされ、遺伝的な素因によりアレルギー性のかゆみのある湿疹を繰り返すこととされています。
両親がともになんらかのアレルギー体質であった場合、両親のどちらか一方がそうであった場合に比べて実に2倍、その子がアレルギーを発症する割合が高くなることがわかっています。
またアレルギーのうちでも両親ともにアトピーであった場合、子がアトピーを発症する確率は72%にも上ります。
遺伝子の「キズ」
では具体的にどのような遺伝を受け継ぐのかというと、アトピーの場合「フィラグリン遺伝子」という、肌バリアの役目を果たす「セラミド」の生成機能を司る遺伝子に小さなキズがあることがわかっています。
セラミドは肌の水分を保ち、角質層より先にアレルギー物質やその他有害物質を通さない役目を果たします。
さらにIgE抗体を産生しやすい体質であると、侵入してきたアレルギー物質、また健康な細胞に対しても免疫が過剰反応を起こすことで、炎症を起こしやすい体質となります。
アトピーの遺伝子レベルでの治療は行われていないため、アトピー素因を持っている場合、あるいはすでに発症している場合は、体質改善や保湿・投薬で症状を軽減したり、出ないようにすることも可能です。
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激しいかゆみのメカニズム
かゆみには「末梢性」と「中枢性」の2種類があり、アトピーのかゆみはこの2種類が複雑に混合して発せられるものであることがわかっています。
出典:シオノギ製薬
図のように、「末梢性」とは角質層のセラミドが不足し乾燥、外部からの刺激を受けて炎症を起こしかゆみを感じるメカニズムです。
掻いてしまうことでより刺激に弱くなるため皮膚病変が起こり、それがかゆみとなり掻く→炎症という悪循環が生まれることで悪化していきます。
対して「中枢性」とは、アトピーの場合内部的なアレルギー反応により内側から起こる炎症・かゆみです。
表面だけでなく体の奥深くから湧き出るような激しいかゆみがこれに当たり、血や膿が出ていても掻くのをやめられないような異常な状態となることがあります。
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アトピー肌の段階・種類
アトピーのかゆみには「ここで終わり」というのがなく、最初は狭い範囲でかゆかったものが、掻いているうちにどんどん広範囲に広がっていくのが特徴です。
これはかゆみを感じる神経が皮膚の浅いところで枝分かれしているからであり、これを掻いて刺激することによって神経細胞が「増殖」してしまうからなのです。
出典:あとぴナビ
アトピー患部を「掻いてはダメ」と言われる大きな理由のひとつはそこにあり、掻かなければそれら神経細胞の枝分かれが時間とともに退化し、同時に表皮のダメージが回復することで炎症やかゆみがなくなることに由来します。
アトピー肌は繰り返すのが特徴、ということを先に言いましたが、アトピー肌そのものがサイクルの中のどの段階にあるかは、以下のように見分けることができます。
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乾燥・・・表皮が乾燥し、かさついてうっすらと白っぽく見える
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丘疹(きゅうしん)・・・盛り上がりのある発疹がいくつもできる。あせもか何かと思って放置しておくと悪化する場合がある
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紅斑(こうはん)・・・もやっとした赤い斑点状の湿疹が出始め、かゆみが強くなる
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びらん・・・掻き壊して皮膚がただれ、剥がれて膿む。出血を伴う場合も
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痂皮(かひ)・・・掻き壊しの上に固いかさぶたができる。炎症に加えて新しい皮膚が生え変わるために、激しいかゆみに襲われる
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鱗屑(りんせつ)・・・表皮ががさがさに乾燥して細かく剥がれ落ちる段階
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苔癬(たいせん)・・・皮膚が層になって厚く、ごわごわとする。黒ずみを伴うことも多い
以下で私が大人アトピーを患っていた際の写真から見てみましょう。
丘疹の段階
ぷつぷつと赤い発疹が無数に現れています。数日にわたって掻いたあとの写真なので初期の初期と比べると範囲が広がってしまった状態ですが、熱を持ったかゆみを伴います。あせもだと勘違いしていました。
というか最初はあせもだったものが、掻いているうちに広がったのだろうと思います。
紅斑の段階
内部から熱を発するようにかゆいものの、盛り上がりができてくるとすぐに皮膚が破れてしまうためうかつに掻けない。
それでも我慢ができないので掻くと、やはりどんどん炎症、かゆみが広がってしまいます。
びらん・痂皮が混ざった段階
掻き壊しでびらんと痂皮の段階がそれぞれごちゃ混ぜになってしまった段階。膿で皮膚とシーツがくっついてしまったり、かゆみの他ぴりぴりと電気が走るようなランダムな痛みで夜も眠れない状態に。見た目のショッキングさもあり、本当にツライ時期。
鱗屑の段階
掻き壊した傷が治り、大小の古い表皮がぽろぽろと剥がれ落ちてくる段階。一見下から健康な皮膚が生えてきているように見えますが、うっすら赤く見える通り、実際はまだ炎症中であり、急ごしらえのペラペラな皮膚で、バリア機能は脆弱です。
少しの刺激でもかゆみがぶり返し、また丘疹あるいは紅斑・・・といったアトピーサイクルを繰り返します。
こうして見ると、それぞれの段階がはっきりと分かれているというよりは、同じ肌にびらんと痂皮、痂皮と鱗屑、などなどが混在して症状が出ていることがわかります。
ただしいずれも共通するのはどこもかしこも「炎症」を起こしているという点で、例えばかゆみがないから、赤みがないからといって、アトピーが治ったわけではないことです。
最初に述べた通りアトピーにはこれらの段階(憎悪/寛解)を遺伝的な素因によって繰り返すという性質があるため、継続的な生活改善・体質改善、そして適切な保湿により炎症、症状が出ないようコントロールしてゆくしか方法がありません。
何かのきっかけでまたかゆみがぶり返すこともありますが、体質改善と保湿がうまくいっていれば、ほぼ無症状で快適に暮らすことも十分可能です。
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大人アトピーの正しい保湿法
アトピーを完治(コントロール)させるためには、どちらか一方だけでなく、体質改善と保湿を「同時に」行っていくことが重要です。
よく、「保湿に頼らず体質改善を徹底的にするんだ!」と意気込んで症状を悪化させてしまったり、ひどくなってから結局挫折してしまうアトピー患者さんがいますが、体質改善というのは一朝一夕にはゆかず、長ければ数年をかけて生まれ変わるプロセスであることを忘れてはなりません。
これは私がいつも言っていることなのですが、保湿に頼らない体を作りたいなら、まずは保湿でも薬でもきちんと使用して「症状を抑えつつ」、十分な睡眠を確保し、精神的な余裕を養いながら体質改善に力を注ぐこと。
体質改善という大きなミッションを完了する前に症状によるストレスに心が折れてしまっては、元も子もないのです。
炎症部分とそうでない部分を分ける
アトピーを正しく保湿するためには、まずは自分の肌の状態を「炎症部位」と「正常な部位」に分ける必要があります。
このとき少しでもかゆみがあったり、手のひらで触れたときにしっとりとしていない部位は炎症部位に分類します。少々厳しい分類のようですが、健康な肌というのは手でキュッと押さえた時に弾力があり、もっちりとしているものなのです。
健康な肌だと判断した部位には普通の敏感肌用保湿剤で保湿を行って構いません。
そうでない部位に関しては、アトピー素因を持つ人の場合、たとえ最初はただの乾燥肌に見えた部分でもじつは内部で静かに炎症を起こしており、ふとしたきっかけですぐにアトピー化してしまいますから、予防的な意味合いでアトピー専用の保湿剤を塗っておいた方が良いです。
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なぜ保湿がアトピーにとって重要なのか
「そんなこと、いまさら?!」と思われるかもしれませんが、アトピーにとっての保湿の重要性を理解することは、アトピーの症状を抑える/完治させるという目的のためには非常に大切なことです。
前にも述べたとおり、アトピー完治には究極的には体質改善しかありません。
そのために保湿はあくまでも通り道であり、その道のりをできるだけスムーズにするための効果的な手法に過ぎません。ですからたまに聞く、保湿をせずにアトピーを治す、みたいなことは本末転倒、いたずらに完治への道のりを険しくしてしまっているようなものです。
その根本的な部分を理解してさえいれば、保湿がアトピーにとって重要な理由も見えてくるのではないでしょうか。
保湿をする目的とは、症状がなるべく出ないようにすること、そうすることによって心身に対するストレスを軽減し、最終目的である体質改善に専念できる状態を作りだすこと、という視点を持っての保湿を心掛けましょう。
保湿剤の種類
一口にアトピーケア用の保湿剤といっても成分によってさまざまな特性があり、大きく二つに分けると以下のようになります。
・オイル・クリーム系・・・分子構造が大きく、肌に浸透しない。それそのものに保湿効果はなく、患部に保護的な油膜を張ることが目的の保湿剤。
・化粧水系・・・分子構造が小さく、角質層に浸透させ、炎症を抑えたり肌に成分を届けることが目的の保湿剤。
オイル・クリーム系(白色ワセリンなど)は患部の保護のほか主に予防的な措置として肌をカバーするのに使われ、保湿効果はほぼありません。
また近年理研が発表した研究結果によると、あくまでも予防的に使用された場合に限り「発症を抑えられる可能性がある」という程度であり、これも100%ではないことがわかっています(参照論文:アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明)。
一方アトピー専用化粧水系は分子構造が小さいため角質層の奥にまで浸透し、炎症を抑えたりミネラルなどさまざまな成分を届けることが可能なタイプの保湿剤です。
理想的なのは、化粧水系保湿剤を塗った後、ワセリンで患部をカバーするという保湿法です。
ただし、人によってはオイル・クリーム系がまったく肌に合わない(私がそうでした)場合もあるため、注意が必要でしょう。心配な場合は広範囲に一気に塗ってしまわず、まずは小さい範囲で試してみることをおすすめします。
アトピーケアの際に注意すべきこと
アトピーケアの方法は人によってさまざまで、患っている歴が長いほど自分なりに確立された方法があったり、独特のケア法を持っていたりするものです。
ステロイドを使用する以外で100%症状を抑える/なくす方法がないのがアトピーの特殊な性格でもありますが、ケア全般に関して注意すべき点はそれほど違いがありません。
ただやみくもにいろいろなものを試したり、根拠のない民間療法に頼るのではなく、できるだけシンプルに「足し算より引き算」を意識するのがアトピーケアのカギだと言えます。
ケアのしすぎは悪化のもと
症状が強くなってくると、とにかく「効く」といわれるものは何でもかんでもやってみたくなるものです。
ケアのしすぎで余計に肌への負担を増やしたり不必要なものを摂りこんでさらに悪化させてしまうという経験は、アトピーさんなら誰でも一度は通る道かもしれません。
こればかりは人に言われても、本人は藁をもすがる思いですから、止めるのは難しいのかもしれませんね。私もあれこれ無駄なことをしてきましたが、自分で無駄だとわかるまでは、どうしても新たな治療法、新たなアトピーグッズに手が出てしまうものです。
ただ私自身完治までの道のりをひととおり経験してきて(寄り道多かったです(笑))思うことは、とにかくケアはシンプルに抑えるのがベストだということ。
もともとアトピーというのは、栄養素も含めていろいろなものが過剰に溢れかえった状態が炎症となって現れたものです。ですから私の場合断食・小食とシンプルな保湿のみで効果が出てからは、とにかく心身共にいらないものをそぎ落とすことだけに専念しました。
偏執的なケアはアトピーを悪化させます。
必要なものだけをシンプルに摂りこみ、むしろ捨てることに気持ちを向けるのが、完治への第一歩です。
アトピーにとって腸内環境の改善がキーとなる理由
私が「シンプル」なケアに目覚めてから重きを置いたのが、腸内環境の改善です。
腸内環境の改善は小食とともにまさに要らないものを「捨てる・そぎ落とす」ことの最たるもので、私のアトピー完治のキーとなった部分です。
アトピーは免疫の過剰反応が原因とされていますが、じつは腸内は人体の7割以上の免疫が存在する場所でもあります。
現代人の腸内環境の悪化の原因は「食べ過ぎ」です。
良いものも悪いもの食べ過ぎて何もかもがだぶついた状態を腸が処理しきれず、オーバーヒートした結果、第二の排泄器官ともいわれる「肌」から排泄しようとして、アトピーの炎症を起こすのだと言われています。
出典:NAIST
これに対するアプローチは実にシンプルで、「過剰ならば食べなければ良い」だけです。
私は美食が人生の楽しみの一つでもあり、過食に慣れ切った体には、食べないことは最初はまさに苦行のように感じられました。ですが慣れてくると、ほんの少しのシンプルな食事がなによりありがたく、味わいのあるものだということに気付きます。
丁寧に出汁を立てて、無添加の味噌でいただくお味噌汁の美味しさは沁みわたるようで、それさえ続けていればアトピーも治るような気がしたものです(実際に治ったわけですが)。
また愛用していた腸内環境改善のためのサプリメント(乳酸菌革命↓)を欠かさず飲み、「出す」ことに専念しました。
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便の状態が変わり、それとともにアトピーの症状もぐんぐん大人しくなっていったのには驚きました。
入浴時が要
アトピーの症状がどこに出ているとしても、全身をケアすることになる入浴時は、他のどのときにも増して重要な時間だと思います。
かゆみが強いときは思わず入念に洗いすぎたり、落屑(剥がれ落ちてくる皮膚)をごしごしこすって落とそうとしてしまったり、熱いお湯がかゆみに気持ちよいからとつい長く入りすぎてしまったり・・・
こういったことをすると、湯上りから睡眠が苦行になります。
入浴時の効果的なケア法~まともな睡眠のために~
ここでも、憎きアトピーをすべて洗い流したいという気持ちを抑え、シンプルかつ優しいケアを心掛けましょう。
アトピーさんにとって入浴の目的は肌を清潔にすることもそうですが、なによりもスムーズに入眠すること、またできれば夜中にかゆみで起きてしまったり、睡眠中に掻いたりしてしまわないようにするためです。
どういうことかというと、前にも述べたとおり、保湿も含めてアトピーケアのすべては「体質改善」ありき。
体質改善に集中できるために保湿もすれば、かゆみ止めその他のケアも取り入れるわけです。
そして体質改善には、きちんと睡眠を取ることは基本です。
関連記事:ひどいアトピーで不眠に陥っている方へ
(今は知りませんが)昔は眠りを取らせない拷問があったほど、眠れないということは人間の正常な判断を失わせ、気が狂うのにも十分なストレスを与えるものです。また肌を修復する成長ホルモンは夜の10時から2時の間に分泌されますから、少なくともこの時間帯に質の良い睡眠が取れるということは、アトピーにとっても重要なことなのです。
スムーズに入眠し、目が覚めずにぐっすりと眠るために、かゆみの出る夜を入浴時/後の保湿でケアしておきましょう。
私は入浴時に日本の母が送ってくれた「みんなの肌潤糖アトケアタイプ」と「みんなの肌潤風呂」の併用を始めてからようやくぐっすりと眠れるようになりましたが、アトピーにとってストレスなくまともに眠れるということがこれほど心身に良い効果をもたらすということは、実際それが可能になるまではわかりませんでした。
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入浴後の保湿ケアと、眠りにつくまで
アトピーさんにとっては、入浴後のかゆみ・痛みに勝る苦痛はないかもしれません。
私はお風呂がトラウマになるくらい湯上りから眠るまでがつらかったので、入浴から入眠までのことについては本当に調べ尽した感があります。
ただここでもシンプルに、前項の入浴法を行ったら、お肌の状態はそれほど急いで保湿しなければならないほどではなくなっているはずですから、優しく念入りに、自分に合った保湿を行います。
私はオージュンヌというアトピー肌専用の保湿剤を、患部を中心として全身に塗りこむだけの保湿法でしたが、プロぺトやワセリンなどのオイルやクリーム系のものが大丈夫な方は、その上からさらに保護的な意味で薄く塗り重ねるのも良いでしょう。
そして眠る前は心を落ち着けて、長時間テレビを見たりスマホをいじったりせず、温かい飲み物を一杯だけ飲んで、すぐにベッドに入るのがスムーズな入眠のコツです。
私はアトピーが完治した現在でも(保湿はもう普通の敏感肌用のものを使用し、それほど念入りにもしていませんが)この入浴と睡眠時を非常に大切にしており、そのおかげでこれまでまた新たに再発することもなく過ごせているのかな、と思っています。
現在の写真
完治までは2年ほどかかってしまいましたが・・・
大成功だったかなと思っています。